★★カリキュラム★★
これは私が通った大学での当時のお話で、他の大学とはまた違うだろうし、現在は制度も変わって色々違うと思います(現在薬学部は6年制ですが当時は4年制)。授業は大きく分けて講義と実習の2種類。講義は1コマ約90分間の授業、実習は基本的に午後全てという感じです。1年生は一般教養課程で実習は週1回、他は毎日4コマの授業(午前中2コマ、午後2コマ、土曜日は午前だけ)、休みは日曜日だけでしたが、若いしそれが当然になっていたのであまり苦痛とかは感じなくて、ただひたすら毎日勉強に追われていた印象です。2年生以降は講義は午前中だけで、午後は毎日実習になりました。実習の種類にもよりますが、毎日夜まで実験ということもあり、翌日朝までにレポートを出さなければいけないので家でもレポート書き、徹夜に近いこともありました。4年生になると研究室に所属して卒業研究、更に国家試験対策となります。文系の大学と違ってあまり遊ぶ暇はありませんが、それでもクラブ活動や文化祭などでそれなりにキャンパスライフを楽しんでいました。

★★クラブ活動★★
クラブ活動は体育会と文化会に分かれていて、私はバンドがやりたかったので音楽系のクラブに所属して活動していました。音楽系でもジャズ、ヘビメタなどジャンルでいくつかのクラブに分かれていましたが、私が所属していたクラブは特にジャンルに縛りもなく好きな音楽をやってました。1年生が一番活動する時間があり、毎日放課後に練習室(音楽系のクラブ用に敷地内に作られたプレハブ小屋。スタジオ代わり)にこもって練習してました。2年生以降は平日午後が全て実習になるので、練習は土曜日や場合によっては日曜日に行っていました。他の学部の学生と活動が出来るので、交友関係は広がります。詳細は音楽のページ参照。

★★第2外国語★★
大学では英語以外にもう一つ外国語を履修します。私の通った大学では選択の余地なくドイツ語が必修でした(医学系の用語はドイツ語由来も多いため)。後にスイスでドイツ語生活を送ることになるとは思いもよらなかったわけですが、大学で習ったドイツ語はほとんど役に立ちませんでした。というかほとんど覚えていなかったです。ドイツ語は文法が英語よりもかなり複雑で、名詞に性(男性名詞、女性名詞、中性名詞)があること自体概念として理解不能だったし、定冠詞(英語のthe)や不定冠詞(英語のa)は名詞の性や格によって変化するのでそれを全部覚えなければいけないということで、教科書の最初に定冠詞の一覧表が載っていました。1格は主語(〜は)、2格は所有格(〜の)、3格は間接目的語(〜に)、4格は直接目的語(〜を)というわけですが、この一覧表を見ただけでもう拒絶反応が起きてしまい、ドイツ語は本当に苦痛でしかありませんでした。あまり会話の練習もなく、ひたすらドイツ語の文章を読んで訳してというような授業だったと思います。スイスのドイツ語学校では、このような一覧表は使いませんでした。もっと実践的な内容で教えてくれます。一覧表はもっと出来るようになってから見直すためという意味で最後のページに載ってる場合はあります。文法も会話も日常生活に即して教えてくれる感じでどんどん吸収出来ました。まあドイツ語圏で生活するとなれば大学とは必死度が違いますけど。
| ドイツ語の定冠詞一覧表 |
| 1格 | 2格 | 3格 | 4格 | |
| 男性名詞 | der | des | dem | den |
| 女性名詞 | die | der | der | die |
| 中性名詞 | das | des | dem | das |
| 複数 | die | der | den | die |
実際にドイツ語で生活する際にこのような一覧表を意識することはあまりなく、会話の中でどのように使われているかという感じで自然に名詞の性も格変化も覚えていって、話したり読んだり出来るようになっていきました。複雑な文法もありますが自然に身についていき、使うことで更に上達しました。ただし帰国してドイツ語を使わなくなると見事にどんどん忘れていきます。語学は使わないと本当に忘れます。

★★国家試験対策★★
私立大学の薬学部は薬剤師国家試験の合格率が非常に重要になります。国家試験に受かる学力がない学生は卒業させないとでも言われているかのような卒業試験というのがあり、国家試験よりも難易度が高く、国家試験の形式に則った試験を4年生の時に3回受けさせられました。これが受かれば国家試験も通るだろうということでしょう。4年生は卒業研究と卒業試験合わせて相当忙しくクラブ活動はもう無理で、どのクラブも3年生までで本格的な活動は終わりという感じでした。

★★病院実習★★
当時はまだ病院の薬局での研修が単位としては認められておらず、完全に自己啓発としての履修でした。時期も春休みや夏休みを利用して約2週間と短期のものでした。総合病院の薬剤部で数名単位で教育担当薬剤師さんから一通りの業務を教わったり、実際に調剤(薬剤師監督のもと)をやらせてもらうというものでした。この当時は何となく将来は病院で働くのもいいなあと思っていました。

高校時代には近所のレストランでアルバイトをしていましたが、大学時代は春休みと夏休み以外アルバイトをする時間はありませんでした。アルバイトの種類も大学で紹介してくれるものが中心で、病院の薬局の下働きや大学の研究室の手伝いという感じでした。薬局の下働きでは、病院実習並みに色々学ぶことも多かったです。

★★前期後期試験★★
前期試験は7月、後期試験は2月に行われ、通らないと再試(有料!)を受けることが出来ました。卒業までに単位をとればいいというのではなく、各学年終わるまでにその学年の単位を全て取らなければ留年でした。どの学年もカリキュラムはギッチリ組まれて入るので、翌年に繰り越して取るとかは時間的に難しいということだと思います。試験前は過去問が出回ったり色々ありました。過去問は参考にはなりましたがあまり当てにすると痛い目にあうこともあり、やはり試験勉強は相当やらなければいけないという感じでした。

★★研究室★★
4年生になると各自研究室に所属して、午後は全て卒業研究という毎日になりました。私は化学合成系の研究室に入り、合成の実験を行っていました。この研究室では毎年学園祭に出展をしており、研究室の募集要項に「学園祭に全員参加することと」の一文がありました。他にそのような(学園祭参加が条件という)研究室はなく、一年間とても楽しく過ごせました。学園祭では小さな丸いお団子状ドーナツを作って販売し(名付けてMiss Doughnuts)、なかなか好評でした。
| 研究室 | 学園祭 |
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薬学部の学生の就職先としては多いのが製薬会社、病院、調剤薬局、ドラッグストアなどがあります。当時採用試験の実施時期が製薬会社等の企業は4年生の夏頃、病院は秋頃といった感じだったので、とりあえず先に行われる製薬会社の採用試験を受けてみたら、すんなり合格したのでその後の病院の受験はしませんでした。病院実習などで病院や薬局就職も頭にあったのですが、それは薬剤師資格があればまた将来的に可能かもと考えて製薬会社に決めました。実際入ってみると研究職もとても面白かったので、結果的にそこに10年以上勤務することになりました。

統計学
統計は実験データの解析に欠かせない学問で、数学の中でも薬学部で重要な科目になります。非常に専門的で分かりにくい部分も多いので苦手な人も多かったです。この統計学の教授がある時試験で出した問題は10問。解答は選択肢4個から選ぶ4択問題でした。難しい中で何とか自力で6問程解いて解答はそれぞれ1番になりました。他の4問は分からず、適当に2番3番4番に散らして解答。しかしこの先生は若干ひねくれた性格の先生でして、なんと全問答えは1番だったのです。とりあえず6問正解したので単位は落とさずに済みましたが、先生の性格をよく知ってる学生は数問解いただけできっと全部1番だと見抜き、見事100点を獲っていました。試験の内容や授業の内容はよく覚えていませんが、統計の教科書は製薬会社勤務時代(研究職)に時々使いました。

生化学
生化学の教授のポリシーで教科書は「ハーパーの生化学」、それも英語の原著を使わされました。先生としては英語のまま理解する重要性を教えたかったのかも知れませんが、当時の私には苦痛でしかなく、試験前には日本語版を購入(高額です)しました。英語を訳す時間が勿体ないと思ったからですが、授業中は英語版の方に色々書きこむので、試験前に見直す時に日本語版の該当ページを探したりと結構手間がかかり、時間的にはどちらでも同じだったかも知れません。先輩からは是非英語でやれと言われました。でも無理でした。

英語
英語の授業は英会話というよりはリーディングメインの内容でしたが、その中で「イノック・アーデン」という小説を読まされたことがあります。イギリスの詩人テニスンの作品ですが、先生のこだわりで毎年これを読むようでした。一応全部読みましたが、事務的に訳すだけで内容は理解出来たけど、原文の音節や情景の美しさとかそういったものに興味もなく、ただ読んだだけで終わってしまいました。最近になって電子書籍が無料だったので再度読んでみたのですが、イギリスに住んだ経験もあり、文章から感じられる風景やイメージもだいぶ変わりました。とてもいい本を紹介してくれたのだと今なら思えます。
当時は英語を読む際に、分からない単語は全てその都度辞書で意味を引きながら読んでいたため(当時は電子辞書もなく紙の辞書)、めちゃくちゃ時間がかかりました。それではリーディング力は上りません。辞書を引かずに意味を推察しながら読み進めたり、語順が日本語と違っても英語の語順のまま意味を理解して、とにかく前進して読み進めることが重要です。その辺のコツみたいなものももっと教えてくれればよかったなと思います。

薬事法
薬事関係法規は国家試験の科目にもなっている法律の必修科目になりますが、教えてくれた先生は薬剤師であり弁護士でもあるというミラクルな先生でした。薬剤師の資格取得後、司法試験の勉強をして数年かかって合格したそうです。医療系の訴訟などを担当しているということで、薬剤師の卵である学生達に「将来医療・調剤等で問題を起こしたら私に連絡して来なさい」と連絡先を教えてくれました。今でもそのメモ書きは残っています。

卒業式は3月に他学部と合同で都内で行われました。その後は夜にホテルでの謝恩会がありました。卒業式は袴姿、謝恩会はフォーマルドレス等と女子はとにかくドレスアップ出来る一日となります。ただし当時薬剤師国家試験は4月に実施されていましたので、卒業式と言っても重要な試験前ということで、全てから解放されて気分爽快!にとまでは行きませんでしたが、それでも最後に思いっきり楽しみました。
| 卒業式 | 謝恩会 |
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